★「虐待死激増」という印象操作
「児童虐待によって子どもが死亡した件数」に関しては、別の意味で見方を注意する必要がある。2003(平成15)年の第一次報告から、よく見てみると、2007(平成19)年の第五次報告までは、死亡件数が増えているように見えるが、第一次報告は、たった6カ月の死亡数であるのに対し、第五次報告は、15カ月もの死亡数になっている。このように厚労省は、死亡数を出す期間を意図的に変えることによって、虐待死数が増えたかのように印象操作している可能性がある。
そして朝日新聞では以下のような集計が発表された。厚生労働省の集計結果である。
「親の虐待や死別などの事情で親元を離れて施設などで暮らす子どもが職員らに虐待された事例が、2010年度に39件あり、被害者は103人にのぼった。厚生労働省が2010年度の全国の集計結果を発表した。ただ、虐待は当事者が訴え出ないと発覚しにくく、実際はもっと多い可能性がある。 被害者は小学生が46人、中学生が25人、小学校就学前が20人で、高校生の被害もあった。発生場所は児童養護施設(27件)が最多で、里親など(8件)も目立った。主な虐待の内容は身体的虐待(23件)、性的虐待(9件)、心理的虐待(4件)、ネグレクト(3件)の順に多かった」
この集計をどうとらえるべきだろうか?
激増しているように思わされている「児童虐待数」の実態は「通報件数」であって実際の虐待ではない可能性がある。そして、虐待の最たるものである虐待死自体は横ばいである。その一方、助けるべき存在である児童養護施設や里親たちの虐待は、氷山の一角だけでこの数字である。
このことを考えれば、「このシステムに存在価値があるのか?」「このシステムはまともに機能しているのか?」という疑念を抱くのがふつうではないか。
これらすべてはまともに機能しているとはいえず、まともに集計されているとさえいえない状況なのだ。これからさらにその状況を詳しくみていくことにしよう。
ここではもう一つ、管賀江留郎氏の児童虐待についての基本的なデータを示しておく。
このデータは『非行臨床の現場からとらえた子どもの成長と自律』の著者のひとりである前島知子氏が掲載論文のために、厚生労働省の人口動態統計にある死因のうちの年齢別他殺被害者数統計をまとめたものを参考に、管賀氏が独自に幼児の中でも殺され方の性質がまったく違う0歳児(嬰児)だけを別に集計したものである。
管賀氏は「嬰児殺し(赤ちゃん殺し)と幼児殺人被害者数統計」というのをインターネット上でアップされており、それらは警察統計をもとにされているが、昭和47年以降しかなく、また未遂事件も含まれている。厚生労働省の統計は完全に殺された者だけの数がわかるし、戦後を網羅しているのでこちらのほうがデータとして活用範囲が広い。
とても重要なポイントなので、やや長くなるが、このデータについての管賀氏のコメントを記載しておく。このデータをまとめられた管賀氏に改めて敬意を表したい。
人口比に関しましては、0歳児人口の推移をまとめたものが見つからず、統計から各年のデータをひとつづつ拾っていくのは手間ですので、やむなく各年の出生数で代用(1~9歳は0~9歳の人口から出生数を引いたもので代用)していますので多少ズレているはずです。こんな基本的な統計がまとめられていないとはまことに嘆かわしいことです。どなたか、正しい0歳児人口(各年の10月1日現在推計値)を基に集計し直していただければ。まあ、この場合はズレても0.01程度でしょうから、過去と現在の比較には問題ありません。0歳児は生まれてすぐに殺されることがほとんどですから、人口よりも出生数のほうが実情を反映しているような気もしますし。
9歳以下の幼児を殺すのはほとんどが親か祖父母です。これで戦後の親の子殺しが概観できます。グラフをご覧いただければお判りのように、殺される1~9歳は昭和30年の12分の1、バブル期と比べてさえ、6分の1ほどに減っています。人口比で見ても、昭和30年の7分の1、バブル期と比べてさえ、4分の1ほどに激減しています。
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