
第4章 児童相談所に拉致された子どもたち
★多くの親が今も、闘っている
では具体的に、児童相談所の被害にあったケースと、その背景について、実際の事件をもとにしながら検討してみよう。
ケースを出す前にひと言断っておかねばならない。ここで出すケースは今現在、もしくは以前、児童相談所と圧倒的に不利な状況の中で係争を重ねているケースがほとんどである。そのような状況において実例を語ることは、児童相談所側を刺激し、より強硬な態度をとられるなど、さらに不利な状況を招く可能性を含んでいる。そういったことを踏まえてなお、本書のために情報を提供していただいている。子どもを取り返すため、このシステムのおかしさを指摘するために、今も多くの親が闘っている。
そして、あなたは明日、期せずしてその仲間入りをする可能性がある。そうならないためには防御方法を身につけるとともに、このテーマを広く世の中に知ってもらう以外、方法はない。まず何よりもそのことを断っておきたい。
★問題行動のあったB君――ケース①
被害児B君の母親は、B君を連れて再婚した。B君は母子家庭で母親が一人で育てた子であり、生活環境が安定しなかったため多動で落ち着きがなく、両親や先生の言うこともまったく聞かない「育てにくい子」であった。
再婚後、B君の行動はさらに荒くなり、しばしば学校や家庭で暴れるようになったが、小学校高学年の男子であるB君の力はかなりなもので、両親は打撲や擦り傷を日常的に負うようになっていた。
両親はこんなB君の養育に困り果て、児童相談所に育児相談に通うことにした。B君の両親は児童相談所を信頼し、真面目に児童相談所に通った。
しかし児童相談所は親身になって話は聞いてくれるものの、具体的な指導や提案は一切なかった。児童相談所に通うようになり、1年以上が過ぎてもB君の状態は一向に改善されなかった。痺れをきらしたB君の両親は「Bはなぜ変わらないのか。児童相談所に真面目に通っているのだから、解決策を見つけてほしい」と児童相談所職員に詰め寄るようになった。
児童相談所側が苦肉の策で提案したのが、「お母さんも育児に疲れているから、少しの間、B君を里子に出して離れたらどうか?」という一時しのぎの案だった。
児童相談所の提案に賛成したわけではなかったが、B君の両親は疲れ切っていたため、安易に提案にのり、B君を里子に出すことで、B君と距離を置くことにした。
しかし児童相談所はB君と両親を引き離すだけ引き離したまま、後のケアを一切せず放置した。
B君と離れて暮らし始めた両親は、すぐに「子どもと離れていては心が離れてしまう。根本的な解決にはならない」ということに気づき、児童相談所に対して「わが子を家庭に帰してほしい」と要求するようになった。
しかし児童相談所はなぜかB君を家庭に返さないばかりか、突然「B君がおかしいのは、B君の両親が虐待をしていたせいだ」と言い出した。もちろん両親はB君を虐待などしていない。児童相談所は虐待の調査も一切しないまま両親の虐待を決めつけた。
そして児童相談所はB君の祖父母(母方の両親)にこっそり連絡をとり、「孫であるB君が両親からひどい虐待を受けている」と事実無根の作り話を吹き込んだ。
その虚偽話を信じたB君の祖父母は児童相談所から助言を受け、家庭裁判所へB君の両親から親権剥奪をするための申立を行なった。家庭裁判所は何の証拠もない児童相談所と祖父母の証言だけを鵜呑みにし、B君の両親がB君に虐待を行なっていたと認定してB君の親から親権を剥奪し、祖父母をB君の親権者にする決定を下した。
B君には幼い妹がいるが、児童相談所は妹に関しては虐待調査も一切行なっておらず放置したままである。児童相談所は、「親権剥奪をしなければならないほどの虐待を行なっている」はずの両親について虐待調査さえ行なわず、幼い女の子を養育させつづけている。
さて、このケースはいかがだろうか? このケースはこれまでのものとはやや異なる。つまりこのケースはどちらかといえば子どものほうが問題を抱えた事例だった。
この親は虐待とは何の関係もない、「子育て相談」という目的のもと児童相談所を訪れた。そんな親でもさえも、ウソと捏造によって里子制度というシステムに無理やり「拉致」させられることになってしまった。なぜ里子システムから元に戻そうとしないのかは、児童養護施設への入所を含めた利権を保持したいという思惑があるからだ(その詳細は●章の鼎談によって確認していただきたい)。
そしてこのケースには二つの矛盾がある。一つは、子どもと親との問題について修復を試みることもなく、祖父母に法律的権威まで譲ってしまっていることだ。これは本質的な解決とは程遠い。虐待がなく児童相談所も何一つ証明できていないにもかかわらず、児童相談所のメンツのために、親のもとから子どもが引き離されてしまったのだ。
そしてもう一つは、もう一人の子どもは親のもとにいるということだ。論理的にいえば、妹も祖父母のもとにいって兄弟ともに育っていったほうが理にかなっているし、本当に虐待親であるならそうなってしかるべきだろう。しかし現実的にはそうなっていない。
これを児童相談所が家庭について真剣に考え、どうやって家庭の再構築に貢献しようとするか、その意思が皆無であることを明確にしている証ではなかろうか。
Copyright © 児童相談所問題 All rights reserved.